来 歴


遠くの庭


もしも私が知らなければ
その場所はもともとなかったことになる
もしも私が聞かなければ
その声はことばとして生れることがない

ああ 空高く枝を揺する楡の木
背後に茂り合う楡の木
遥か彼方には隠れている楡の木
見える木から見えない木まで
すべての木の身ぶりを
こんなにも大切に思うわけは
遠くの庭に用意されている一本の木
未知の友から送られてくる
親密な挨拶なのかもわからないから

どこかもっと遠くの庭で
はげしくかぶりを振り続けている私
その一本の木はまだ誰も見つけない

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